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藍野大学学長 高橋 清久 |
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近年、睡眠が注目を集めています。健康を維持し、病気を予防し、日常生活の質を高めて生き生きと心豊かな生活を送るためには、睡眠が大事だということが認識されてきたからでしょう。
不眠症を改善するためには、主に6つの方策があります。まず「光」です。私たちは脳の一番奥深いところに体内時計を持っています。なぜ朝が来れば自然に目が覚めて、夜になると眠気がやって来るのか。それはリズムを整える同調因子が、目や耳などの感覚器を通じて信号として体内時計の中に入ってくるから。同調因子には、温度、運動、食事、環境因子などもあるが、光が最も強い。体内時計の周期はほぼ25時間。私たちは毎朝起きて光に当たることによって、体内時計を1時間ずらすという微調整をしているのです。無意識のうちに24時間周期に合わすことができているが、この合わせ方がうまくいかなくなると、さまざまな病気が出てきます。現代人の多くは夜、光を多量に浴びている。例えばパソコンに向かっていれば、かなり強い光が目の中に入ってくる。そうすると夜型になりがちで、世の中全体が今、その傾向にあります。
認知症になると夜眠れず、昼間寝てしまうほか、徘徊などの異常行動が起きるが、光療法で効果が見られる。高齢者の施設には光シャワー室が設けられるようになり、天井いっぱいの蛍光灯の下で生活することで活動性が上がり、夜の睡眠が改善します。
2番目は「運動」。日中に活動すると体温が高くなって、寝付きを良くし睡眠を深くする効果がある。体温の変動の振幅が小さくなると、夜の睡眠も障害されがちになります。特に、夜の運動の効果が見直されています。寝る前に30分ぐらい汗ばむ程度に運動することをお勧めします。
3番目は「昼寝(仮眠)」。眠気のリズムには、1日に2回のピークがある。夜間と昼食を食べた後。昼寝をすると心身がリフレッシュされて、気持ちよく仕事ができます。昼寝の長さは15〜20分程度。長くすると深い眠りに入ってしまうので、起きた後がつらい。
4番目は「食事」。体のリズムをセットする役目があり、とりわけ朝食が1日の体のリズムを整えるのに重要。朝食抜きでは、なかなか活動性が高まらない。夜の過食は睡眠の妨げになる。お酒はくつろいだ気分で会話を楽しむ際には悪くないが、睡眠薬代わりの寝酒はだめ。お酒を飲むと寝付きは良くなるが、その後の睡眠が非常に浅くなり、中途覚醒を増やすので、長期にわたると害があります。
5番目は「入浴」。ぬるめのお湯に30分ぐらいゆっくり入ると、リラクゼーション効果がある。上昇した体温が下がってくると寝付きやすくなり、睡眠を深めます。
最後は「無念無想」。不眠症の中で一番多いのが神経症性の不眠。もともと神経質な性格の人が、何かのことで眠れなくなると、これからずっと眠れないのではないかと、過度の不安、恐怖から、眠れないことが条件付けられてしまう。「睡眠とは蝶々のようなものである。捕まえようとすると逃げてしまうが、じっとしているとやってくる」と言われる。どこかで眠りにこだわらない時期が必要です。
◆快眠は意欲的な生活から
年を取ると睡眠の質が悪くなる原因は、まず脳の睡眠中枢の老化。これは老化現象だから受け入れるしか仕方がありません。次に、心理・社会的要因。例えば仕事がないことによる日中の運動量の低下、睡眠に対する過剰な心配、将来に対する不安、生きがいや趣味をなくすことなど。3番目に身体的要因として、心臓の病気、頻尿、関節痛など。無呼吸や筋肉のけいれんは、自覚していなくても眠りを妨げていることがあります。4番目は降圧剤、抗パーキンソン薬、ステロイド剤などの薬が睡眠を妨げている場合です。
ここで強調したいのは、ぜひ生きがいや趣味を持っていただきたいこと。意欲的な高齢者は比較的睡眠が良好です。嫌なことは忘れてストレスを解消し、体を使って疲れたところで健やかな睡眠を取ること。常に前向きに、何か楽しみを持って日々を過ごしていただきたい。これが生活の質を向上させる最大のポイントだと思います。