21世紀のチーム医療への夢を託したい。
技術におぼれず「心」のケアで
患者さんの社会復帰を目指そう。
藍野大学
学長 高橋 清久
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20世紀の医療は、医師を頂点にしたピラミッド型のヒエラルキーを形成していました。そこでは、残念なことに患者さんと家族の思いはないがしろにされることがあり、自己決定権やインフォームドコンセントが軽んじられる傾向にありました。しかし21世紀は、医師、看護師、作業療法士、理学療法士、精神保健福祉士などの専門職がそれぞれ対等に役割を分担、連携し、患者さんや家族と共に医療に当たる「チーム医療」の時代です。そこで、どんな人材が求められるでしょうか。
私は四つのポイントを挙げます。第一に、人間関係が結べる人。特にチーム医療を進めていく場合、専門性を超えてさまざまな人との協力が必要ですから、コミュニケーション能力は必須です。
第二に、社会的な問題に関心を持てる人。自分の専門だけに捕らわれるのでなく、広い視野で自分のやっていることを認識できる人です。組織の矛盾があれば冷静に判断し、それを指摘できる人とも言い換えることができます。
第三に、自己管理ができる人、ストレスマネジメントができる人です。医師や看護師は目的意識が旺盛で、自分の身を捨てても患者さんを救いたいと願う献身的な人が多い。たいへんすばらしいことですが、弱い立場の人のケアをするには、自分自身が身体的にも精神的にも健康で、ゆとりが必要なのです。ストレスの発散、克服を図らねばなりません。ストレスマネジメントのポイントは、ソシアルサポートが受けられるか否か、つまり困ったときに家族、先生、友達など、誰かに助けてもらえるかどうかです。分からないことがあったら周囲の人に聞けるかどうか。これでずいぶんストレス度が違ってきます。普段からそのような人間関係を作っておくことが大切です。
そして第四に、リーダーシップ。将来、臨床の場であれ研究の場であれ、全体を把握して適切な指揮を取れることが大切です。
これらのことは、もちろん今できなくてもよいのです。そういう方向を目指し、挑戦しようという人にこそ、私は夢を託したいと思います。医療の専門職は「心」のケアを避けて通れません。技術におぼれず、最終目標は患者さんの社会復帰だということを忘れないで励んでください。
■プロフィル■
高橋清久 Kiyohisa Takahashi
1938年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。国立精神・神経センター名誉総長。滋賀医科大学精神医学講座助教授を経て、国立精神・神経センター武蔵病院院長、国立精神・神経センター総長を歴任し、藍野大学学長に就任。